2013年10月31日木曜日

小泉元首相の脱原発論

 小泉純一郎元首相の「脱原発」発言が話題になっているようだ。小泉元首相は、フィンランドで高レベル放射性廃棄物の最終処分施設「オンカロ」を視察し、無害化するまでに10万年以上かかると聞いて、「原発はダメだ」と確信し「脱原発」を言い始めたのだそうだ。

だが、待って欲しい。脱原発を唱えれば総てが解決する訳ではない。既に使用済み核燃料が各原発で大量に一時保管されており、これらをいつかは処理しなくてはならないのだ。そして、その前にやらなければならない事が数多くある。問題の東京電力・福島第一原発の汚染水処理の収拾、及び、東京電力・福島第一原発の1~6号機からの核燃料取り出しと1基につき40〜60年掛かると云われている廃炉処理、そして、福島の除染、そして各原発の再稼働問題だ。「脱原発」だろうが「原発緩やかに廃止」だろうが「原発推進」だろうが、いずれの問題も今後解決しなければならない。「脱原発」を唱えれば問題が解決されたような錯覚になるとしたら、それは大きな間違いだ。

民主党政権下で、運転開始から40年が経過した原発を原則廃炉とする法律が定められた。この「40年廃炉ルール」に従えば、新しい代替原発が稼働しない限り我が国では2050年には自然に原発はゼロになる。この間にこそ、今後の我が国の原子力エネルギーも含めたエネルギー戦略・・・日本のエネルギー基本計画を策定すべきである。今の原発の再稼働の可否も判らないままでは日本のエネルギー基本計画も策定できないままである。

東京電力・福島第一原発の事故処理も目処が立たぬままだから、民意を刺激せず原発の代替新設に至る道を模索しつつ・・・ほとぼりが冷めるのを待っているのだろう。

過去記事にも書いたが、世界には429基の稼働中の原発があり、建設中が76基と計画中97基を加えると合計600基を越える。30カ国で原発が稼働中で、新たに11カ国が建設中か計画中である。特に、中国は原発建設に積極的で建設中計画中の原発は56カ所なのだそうだ。こうした現状を見れば、世界は今後長期間に亘って原発と共存する道を歩むのだろうが、我が国は原子力エネルギーから脱退すべきなのだろうか?

昨年8月の「第3次アーミテージ・ナイ報告書」の中で、米国の元国務副長官リチャード・アーミテージ氏とハーバード大学特別功労教授のジョセフ・ナイ氏は、日本の原子力(Nuclear Energy) について次のように提言した。「地球温暖化ガス(CO2)排出削減の目標達成やエネルギー問題における日本の海外依存度の増大の観点等からすれば、原発の慎重なる再稼働こそが日本にとって責任ある正しい選択である。原子力の民間利用において、日本がロシア、韓国、フランス、中国に遅れる事態は回避すべきであり、日米両国は連携を強め、福島原発事故の教訓に基づき、国内外の原子炉の安全な設計と規制実施の面で指導力を発揮すべきである。 」としている。つまり、「脱原発を行うな」というわけだ。

そこで小泉元首相が喧伝する無害化するまでに10万年以上かかる高レベル放射性廃棄物を我が国国内で保管する事が如何に困難かと云う話に繋がってくるだろう。

拙ブログの過去記事「核種分離消滅処理技術」にも書いたが、「核のゴミ焼却炉」を稼働させ高レベル放射性廃棄物を処理する事で10万年ではなく500年ほどの保管で最終処分を完了させる事が出来るのだそうだ。

既に我が国存在している無害化するまでに10万年以上かかる高レベル放射性廃棄物を処理する為にも、我が国が脱原発を推し進めて第4世代原子炉へのロードマップを閉ざすと第1世代第2世代第3世代原子炉で積み上げた核燃料廃棄物の処理への途をも閉ざしてしまう事になる・・・訳だ。(評判の悪い高速増殖炉高速中性子による核分裂連鎖反応を用いた増殖炉もんじゅは、次世代原子炉とされている第4世代原子炉加速器駆動未臨界炉(超高温ガス炉)や同じく第4世代原子炉高速炉高速中性子による核分裂反応がエネルギーの発生源となっている原子炉)へのマイルストーンであった訳。)

尚、余談だが、温室効果ガス排出量削減を盛り込んだ国際ルールを作り、新たな技術革新と国際金融市場の儲けのタネを産もうとしてビル・クリントン米国元大統領が仕立てたグリーン・ニューディールごっこの先駆けとしての「取り決め」を、副大統領だったゴア(アルバート・アーノルド・アル・ゴア・ジュニア)が「不都合な真実」としてIPCCと共にノーベル平和賞を共同受賞し、今も温室効果ガス排出量削減ビジネスの先頭を走って居られる。小泉元首相も、講演ネタとして社会活動ネタとしての「飯のタネ」としての脱原発を唱える事になさったのだろう・・・と思う。

で、安倍内閣が、今後の日本のエネルギー基本計画を策定をし易くする為には、東京電力・福島第一原発の問題を今後も放置する事は許されない。もう既に東京電力に福島第一原発の封じ込めが出来ない事は明らかであるし、今後の1基につき40〜60年掛かると云われている廃炉処理も任せる事は断じて出来ない事も明らかだ。そもそも10兆円とも20兆円とも云われる賠償額を東電が払いきれるとは思えない。結局のトコロ、何だかんだと誤魔化して注入した国費を当て込んで私企業としての御座成りな賠償を行うだけだろう。この福島第一原発の事象に「原賠法3条但し書き:ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない」が該当するか否かは私には判らないが、前民主党政権の仙谷代表代行が拒否したのだ。この決定を現政権が追認するのなら早急に東電を破綻処理を開始するしかない。そうであれば、国として、汚染水だけでなく廃炉や賠償や除染など、総ての事故処理を担当し、国の公共事業と位置づけて戦力を一挙に投入し、迅速に処理する事が可能となる筈だ。東電が破綻すれば、電力債や首都圏大企業の東電株式の持ち合い等の金融への影響は免れ得無いだろうが、原子力事業者として全体安心を担保しなかった責任を株主も有限責任の範囲でキチンと果たすべきである。安倍政権は、東電を取り巻く政財界との馴れ合いに遠慮し、結果として東電の延命の為に無駄な国費投入を続けながら事故処理を徒に長引かせてはならない。この福島第一原発の事故処理を国家として責任をもって迅速に処理するロードマップを示した上で、原発再稼働や廃炉に伴う新しい代替原発建造を盛り込んだ今後の日本のエネルギー基本計画を国民に示す事が可能となる筈だ。








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