2013年2月28日木曜日

核種分離消滅処理技術

「「核のゴミ」の寿命を縮める 世界初の実験」 News i - TBSの動画ニュースサイト:


高エネルギー核廃棄物は、ガラス固化(ガラス素材と高温で溶かしキャニスターというステンレス製の円筒に流し込んで密封)し緩衝剤で包み、地下数百メートルの地層の中に貯蔵、10万年ほど管理する事になっている。現にフィンランドでは地下420mに貯蔵実証実験施設「オンカロ」を建設している。


プレート境界が鬩ぎ合う日本列島には数万年単位で安定な地盤は存在しない事より、私は(別ブログでは)国際条約を改定し海溝投棄を行うしかないと思っていた。この決断をせずにダラダラと時間を引き延ばし核廃棄物の処理を先延ばししていた(風に私には見えた)が、こうした画期的な方法で核廃棄物を短時間で無害化する方法が開発されるのを待っていたのカモ知れない。


冒初のURL引用で紹介されている技術は、宇宙戦艦ヤマトに出てきたコスモクリーナーとは異なり放射能を消し去る訳ではない。ある放射性核種の半減期は原子核の中性子と陽子の数で決まるので、従来のウラン濃縮と同じ化学的手法で特定の核種を集めて加速器(今回の実験では加速器だが、将来的に商業的には、原子炉)で中性子をぶつけて半減期の短い核種や安定した核種に変換する技術である。

例えば・・・、

半減期が28.5年のストロンチウム90の場合、中性子1個を吸収すれば、ガンマ線を放出して半減期9.5時間のストロンチウム91に変わる。

同じくストロンチウム90が中性子1個を吸収しても、中性子2個を放出すれば半減期51日のストロンチウム89に変わる。

同じくストロンチウム90が中性子1個を吸収しても、陽子1個を放出すると半減期2.6日のルビジウム90に変わる。

同じくストロンチウム90が中性子1個を吸収しても、アルファ線を放出すると半減期76日のクリプトン87に変わる。

同じくストロンチウム90が(反応の過程で出た)ガンマ線を吸収し、中性子1個を放出すると半減期51日のストロンチウム89に変わる。

他にも様々なケースがあるカモ知れないが、こうして半減期28.5年のストロンチウム90は消滅処理技術で半減期を最長でも51日にする事が出来た訳だ。

この夢の技術で原発がドンドン増えても、少なくとも核廃棄物の捨て場に困る事は無さそうに見えるのだが、ナカナカ上手くはいかないのだろう。先ず第一に核種を分離する技術だろう。天然ウランには非核分裂性のウラン238に対して、核分裂性のウラン235が約0.7%の割合で含まれている。それを化学的手法で濃縮して、商用原子炉で使う核燃料は低濃縮ウラン燃料はウラン235が20%未満程度まで濃縮し、核兵器で使われる高濃縮ウランでは70〜90%まで濃縮されている。手間と費用の掛かる高濃縮ウランの手法で核廃棄物の中から核種毎に分離し濃縮する技術の確立が必要だ。そして、その上で、競合反応(並発反応=複数の反応が同時に競合して起こる反応)等が発生し予想外の半減期が長〜い核種を生んでしまわない様な管理技術の確立が必要だろう。



こうして、核種分離消滅処理技術が完成すると核燃料廃棄物は「核のゴミ焼却炉」で処理すれば500年以下の保管で済む様になる筈だ。そして、先ずは第4世代原子炉加速器駆動未臨界炉(超高温ガス炉)で処理されていき、その後は高速炉の炉内で核のゴミを燃やす事になり、その後、核融合炉の実現する頃には長年溜め込んだ高エネルギー核廃棄物の処理が一段落する事になっている。






#こうして考えると、評判の悪い高速増殖炉高速中性子による核分裂連鎖反応を用いた増殖炉もんじゅは、次世代原子炉とされている第4世代原子炉加速器駆動未臨界炉(超高温ガス炉)や同じく第4世代原子炉高速炉高速中性子による核分裂反応がエネルギーの発生源となっている原子炉)へのマイルストーンであった訳。原発を止めて第4世代原子炉へのロードマップを閉ざすと第1世代第2世代第3世代原子炉で積み上げた核燃料廃棄物の処理への途をも閉ざしてしまう事になりますヨ、って事。う〜ん、原子力村の人達も奥深いなぁ...

0 件のコメント:

コメントを投稿