2014年6月6日金曜日

読書



我が国SF界の巨星であった小松左京の『虚無回廊』は、三島由紀夫の最後の長編『豊饒の海』や太宰治の『人間失格』と並び称せられる素晴らしい遺作だと思っている。私は別ブログ過去記事でも何度かネタにした・・・

(その3)大きく脱線・・・人工知能萌えな私 2011-11-03 19:59:02 | Innocent joke


この中で、私の最も好きな小松左京作品として同作への憧憬をネタバレとお粗末な解説と云う形で発露したツモリである。小松左京氏自身が、最後の長編小説だと意識して自身の過去作品への繋がりを意図的に盛り込んだ作品だと思っている。


巨星・小松左京氏の未完の大作として、阪神淡路大震災で受けた衝撃からか鬱病を患い平成12年には鬱病からの復活の狼煙として連載誌には未収録だった部分を第3巻として刊行された。だが、平成23年の同氏の死去に依って(未完の)遺作と確定してしまった。その続編が、『パラサイト・イブ』や『BRAIN VALLEY』で知られる瀬名秀明氏に依って、小松左京氏へのオマージュ作品として刊行されていると書評欄で知った。

瀬名秀明さん、小松左京さんへのオマージュ「新生」
YOMIURI ONLINE 本よみうり堂 2014年03月20日 08時00分
「べらぼうに面白く愛読書だった『虚無回廊』の序章で、回収されていない伏線を回収するのが目的でした」なのだそうで、『書かれざる過去と未来を膨らませ、愛の物語に昇華させた』のだそうだ。



尼で買って読んでみたが・・・御本業がSF作家ではない瀬名秀明氏だが、小松作品の筆致を丹念に模倣した見事なオマージュ作品に仕上がっていると思う。小松左京氏が自身の過去作品群を総括した『虚無回廊』を未完としてしまった為に、瀬名秀明氏も同じく小松左京氏の過去作品群へのオマージュとしての連作としたのだろう。私は、彼の手に依る『書かれざる過去と未来』に特段の違和感を感じなかった。最近のオマージュ作品では 映画『009 RE:CYBORG』での未完の大作に対する『書かれざる未来』には少々ガッカリさせられていたのだが、本作は素晴らしい。(但し、良く出来たオマージュ作品なので、小松左京作品群には何ら影響は及ぼさない・・・有っても無くても構わない代物である)小松左京ファンなら、連作の各部分に散りばめられた元作品が何かを考えるだけでも愉しいだろう。(この週末には、本棚を整理して小松左京作品を読み返そうと決心させられた)




故・小松左京氏は虚無回廊シリーズの続編に関する小松左京氏御本人のプロットが存在していて御遺族から提供されるのなら瀬名秀明氏に未完の大作を閉めて頂くのも良いだろうし・・・、このまま未完の大作として放置して頂くのも良いだろう。私自身は別ブログ過去記事に書いた通り『書かれざる未来』を勝手に想像していている。

2000年に第3巻が刊行された時の帯には「虚無回廊、執筆再開!」と謳われていたので、4巻以降の下書きかプロットは存在するのカモ知れないが、これが世に出る可能性は低いだろう。だが、架空の舞台装置である人工天体の謎は兎も角、ヒデオ・エンドウの分身でもあるAEのHE2と、アンジェラ・インゲボルグ(AI)の分身であるアンジェラ・E(AE)との、「ゴルディアスの結び目」でもある人間アンジェラに叶わなかった『生命の可能性』を高める方法の1つとしての「子作り」の営み(人類SF史上初の人工知能同士の有性生殖)が行われることは想像に容易い・・・だろう。(「架空の舞台装置である人工天体の謎は兎も角」と切り捨てたが、故・小松左京氏のSF作品中で舞台装置のSF的解釈が披露される方が少ない。「日本沈没」は数少ない例で、物体Oでは正体は明かされたが謎解きはされない。SF的舞台装置の種明かしはしないSF作家だったのだろう)未完の大作だが、自らの想像力で補完して『生命の可能性』で『永遠と無限』へ羽ばたかせてやりたいモノだ。

故・小松左京氏のHE2は、自然発生した<私>を持つ人工知能ではなく原形である人間・遠藤秀夫の魂の構造を模していると同時に、アンジェラ・インゲボルグを模したアンジェラ・Eの要素が基礎となっていて・・・、遠藤秀夫のコピーであると同時に人間・遠藤と人間・アンジェラの子供でも在るかも知れない。この展開では、HE2はオイディプス王(エディプス)の再来に成りそうだが・・・




娯楽小説を読む事を読書と誇るツモリは無いが、昨今の活字離れの風潮は嘆かわしいと思う。読書の良さとは、想像力の翼を思いっ切り広げられる事だろう。橋田壽賀子ドラマの様に、登場人物が長セリフに載せて自らの心情をゲロゲロ吐き出しているのを観ると吐き気すら覚えてしまう。日本人の信条は察しと思い遣りの筈だったが・・・。

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