2014年12月22日月曜日

プライミング効果?

多能性マーカーであるOct3/4が働くと緑の蛍光蛋白GFPが発現する様に導入済みのマウス新生児の脾臓細胞から、弱酸性処理によりGFP陽性細胞を作製できるかどうかを検証する実験群である。

採取した脾臓細胞から、フローサイトメトリー(のセルソーター)で分離させ、(白血病細胞と正常細胞を分離するために用いられる)CD45ゲーティングの手法を使い、90%以上がCD45陽性細胞とした細胞群を用いた。

弱酸性処理には、ネイチャー誌に掲載されていた塩酸と共に、秘密のレシピだと小保方氏が特許出願明細書にも書かれたATP(アデノシン3リン酸)の2種類を使用し、酸性処理から7日前後の細胞を解析した。

その結果、希塩酸でもATPによる酸性処理に於いても、ネイチャー論文の一桁低い割合でしか「緑色蛍光陽性細胞」の出現は認められなかった。その事はコントロール(対照実験)で展開したC57BL/6純系マウスでも、B6/129 F1マウスでも、差異は無かった。次に、それらの細胞群をバラバラにしてフローサイトメトリーでFACS(fluorescence activated cell sorting)したが、CD45陰性GFP陽性の細胞は、ネイチャー論文とは大きく異なり極少数しか出現しなかった。
次に、定量PCR(蛍光プローブ法)でOct3/4の発現を解析したが、極少数のCD45陰性GFP陽性の細胞の中から、更にOct3/4を発現しているものは非常に少なく、GFP陽性との相関は高くない。加えて免疫染色手法でOct3/4(多能性幹細胞における中心的転写因子)、Nanog(多能性幹細胞の分子マーカーとして使われるホメオドメイン蛋白質)、E-cadherin(細胞表面に存在する細胞接着を司る糖タンパク質)の発現を解析したが、これらの蛋白質を発現している細胞は更に少なくGFP陽性との相関も低かった。
ネイチャー論文ではキメラマウス作成に参加した山梨大学の若山照彦教授が多忙により協力が出来ないとの事だったので、ネイチャー論文と同じ手法であるGFP陽性の浮遊細胞塊を切り刻んでマウス胚盤胞胚やモルラ胚(桑実胚)に注入し、マウス胎齢9.5日胚で緑色蛍光陽性細胞が出現するかどうかでキメラ形成能を調べた。実験では、1500個超の細胞塊を宿主胚に移植し、約半数で胚発生を確認したが、すべての胚でキメラ形成能は認められなかった。但し、テラトーマ(胚細胞性腫瘍)を伴う実験は1〜2ヶ月を要するので省略したのだそうだ。
これらの実験の過程で、ネイチャー論文に書かれたマウス新生児の脾臓細胞を希塩酸で処理した場合よりも、特許出願明細に書かれた通り、ATPにて酸性処理を加えたマウス新生児の肝臓細胞の方が、GFP陽性の浮遊細胞塊が出現しやすいことが分かった。そして、更に、C57BL/6純系マウスの方が有意にB6/129 F1マウスよりも発現し易い事が分かった。それらの細胞塊には、少数ではあるがOct3/4遺伝子やOct3/4蛋白質を発現する細胞が含まれている事が判明した。そして、この細胞塊でキメラマウスの作製を実施した。200個超の細胞塊を宿主胚に移植し、約半数で胚発生を確認したが、キメラ形成能を示す胚は存在しなかった。又、ネイチャー論文にあるのと同じ方法で、増殖能を有するSTAP幹細胞が樹立できるかどうかも検討。GFP陽性の浮遊細胞塊をLIF/ACTHを含む培地で培養したところ、少数の細胞塊から小型の幹細胞様の細胞が出現したが、数日後にはすべて死滅し、継代培養もできなかった。加えて、胎盤へ寄与するとされるFI幹細胞の樹立も試みたが、STAP幹細胞と同様の結果に終わり、樹立できなかった。
今の段階が、頂上までの何合目に当たるのかは神様しか分からないのだが、継続して研究を進めれば次のステップに辿り着く可能性がゼロでは無い事が明らかになった検証実験だったと私は思った次第。



「進んだ時計の針を戻すことはできないが、自らの手で進めることはできる」

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