上記URL引用記事では
「 近い将来に発生する可能性が高い南海トラフ地震について、気象庁は7日、『先月から今月にかけて紀伊半島から四国で相次いでいる最大マグニチュード(M)5.4の地震は、フィリピン海プレートが沈み込む境界内で発生したスロースリップが引き起こした可能性が高い』と明らかにした。」
と煽ってみたが
但し、「気象庁はこれらの観測結果について、『現時点では南海トラフ沿いで巨大地震が発生する可能性が平常時と比べて相対的に高まったとは言えない』として、引き続き観測を続けている。」
と、切迫感は無いと纏めている。
西南日本に発生する深部低周波微動の活動概況はずっと以前から報告が挙がっている。私の別ブログでも6年前に記事にしている。
スロースロップ地震の学術的情報はWikiに譲るが、スロースリップ地震が巨大地震の短期的な前兆現象であるとの知見は無い。スロースリップやサイレント地震が起き続ける事で、プレート同士の境界面の一部が強い圧力によって密着して固定(固着)され、数十年から数百年の間圧力を溜め込んで動かない固着域(
アスペリティ)が、溜まった圧力に抗しきれず破壊されて一気に動く事でプレート境界型巨大地震が発生すると云う説が最有力だ。その固着域(
アスペリティ)の正体は、私は海洋プレート内の火山島や
海山だと予てから(学生だった30年以上前に)思っていたが、先日別ブログ過去記事に地震学者の方から頂いたコメントで火山島や
海山の根っ子は逆にコロやベアリングの球の様に滑りを良くする働き・・・地震波を伴うスロースリップ地震を引き起こす遷移領域・・・
静的に不安定破壊を起こす部分だと教わった。最新の知見での固着域(
アスペリティ)とは、圧縮され続けた高温により溶着された比較的平らな面だと予測されているそうだ。(尚、他にも固着していない平らな面でサイレント地震・・・静的に破壊を伴わない滑り・・・地震波を発生させないスロースリップが発生している)
何にしろ、スロースリップやサイレント地震は長期的には
アスペリティで強い強震動を発生させるメカニズムにエネルギーが溜まっている目安には成り得るだろうが、現在の科学力では、
動的な不安定
破壊を起こす
降伏点迄の残りゲージ(目安)は発見されていない。
その降伏点はプレートの性質(温度や強度や弾性や密度等々)に拠って変わるだろうから、これからプレート内ボーリング等で資料を集め、実際に発生する地震で答え合わせをし続けて知見を集めていく段階にあるのだろう。
上画像は、GNSS 連続観測システム(GEONET)が捉えた1997年4月から2017年3月時点での日本列島の地殻変動なのだが、この図から1年3ヶ月後の大阪府北部地震、1年半後の北海道胆振東部地震にも何となく納得がいくが、何よりもスロースリップやサイレント地震が多発している和歌山県・南西諸島の地殻変動が著しく素人目には巨大地震への切迫感が高そうに見える。
我々の科学力では地震予知は敵わないとは言うものの、防災の備えの必要性は強く感じ取る事が出来そうだ。防災の備えとは、発災後に楽に生活する事を目指しがちだが、それは大きな間違いだ。発災を生きて乗り越える為の方策こそが防災の備えである。水や食料の備蓄の前に、倒れそうな家具の固定、倒れそうな家具の側で就寝しない、飛散したガラスでの受傷防止、職場や通勤途中で身を守るシミュレーション等々にこそ注意を注ぐべきだと思う。