2013年11月22日金曜日

今までの南海地震予測には見直しが必要か?

別ブログの過去記事「ゆっくり地震 2012-03-16 20:52:41 」にも書いたが、深夜スロースリップ地震と呼びたくなる様な不思議な振動を感じる事がある。言語能力が乏しいので上手い表現が出来ないのだが「大きな船が風で傾ぐ様な・・・液体的な」揺れである。














その別ブログに引用した図だが「西南日本に発生する深部低周波微動の活動概況」である。但し、この図に記された低周波微動は地震計に計測されたモノであり、この微動こそが正しい意味でのスロースリップ地震であり、恐らく、このスロースリップ地震が起きている位置に微動を記録される程度のアスペリティが存在しているのだろう。この図に記録されている微動の震源域周辺に、将来地上に住まう人々に被害をもたらす強震動を引き起こす真のアスペリティが隠れているのだろう。

このフィリピン海プレートがユーラシアプレート(いや、アムールプレートと区別すべきか?)の下に潜り込む典型的な海溝型プレート間地震のとして南海・東南海・東海地震は捉えられている。直上の引用図では何故かスロースロップ地震が観測されていない空白地帯が存在している。

その答えが、フィリピン海プレートの断裂である。

公益社団法人日本地震学会 - 表紙

"フィリピン海プレートの断裂と西日本の地震火山活動"


公益社団法人 日本地震学会Webページ表紙より


「プレートは過去数百万年の運動変化の結果,現在の中国四国地方と近畿地方の間で断裂しており,その運動史と形状によって地下からの流体の供給ルートが規定されるだろう.内陸の地震火山活動はそれらを反映する」

引用:Ide, S., K. Shiomi, K. Mochizuki, T. Tonegawa, and G. Kimura (2010),
Split Philippine Sea plate beneath Japan, Geophys. Res. Lett., 37, L21304,
doi:10.1029/2010GL044585. (東京大学大学院理学系研究科 井出 哲)


紀伊水道の辺りでフィリピン海プレートが断裂し、紀伊水道以東のフィリピン海プレートは急角度に沈み込んでいて、紀伊水道以西のフィリピン海プレートは(若くて、薄いので)緩やかな角度で西日本が載っているユーラシアプレートアムールプレート)の下に潜り込んでいるのだそうだ。その深さは、和歌山市の直下では約60Kmに達しているのだそうだが、岡山市の直下では約40Kmなのだそうだ。その学説を紹介している新聞記事を引用する。



南海地震予測に見直しか?
西日本の陸の下に潜り込んでいる巨大な板状の岩盤で、東南海・南海地震などを引き起こす「フィリピン海プレート」が、近畿と中四国の間の地下で裂けているとみられることが、防災科学技術研究所などの地震波解析でわかった。従来の東南海・南海地震に関する予測は、ひとつながりの岩盤と考えて行われてきており、想定震源域や予測震度の見直しも迫られそうだ。広島市で開かれている日本地震学会で27日、発表した。
フィリピン海プレートは、太平洋から、西日本の陸を構成するプレートの下へ年に4~5センチの速度で沈み込む。プレートの境界付近ではひずみがたまり、東南海・南海地震を起こす。
防災科研の汐見勝彦・高感度地震観測管理室長、東京大の井出哲・准教授らは、過去10年間の約700の地震波を詳しく解析して、プレートの深さを推定。紀伊半島ではプレートは急な傾きで沈み込み、和歌山市付近で深さ約60キロに達する一方、中国・四国地方はなだらかに沈み、岡山市付近で深さ約40キロだった。
こうした結果から、プレートは、紀伊水道から兵庫県西部を通る線を裂け目として、傾きが急な領域と緩やかな領域の二つに割れていると推測。東京大地震研究所が震源の深い地震12例を解析すると、裂け目の領域で強い波動の乱れが確認された。
梅田康弘・京都大名誉教授(地震学)の話「東南海・南海地震の発生時期や揺れに関するこれまでの予測では、フィリピン海プレートが断裂していることは想定されていない。地震の起こり方から考えを変えていくことになり、研究を進める必要がある」 (2010年10月27日 読売新聞)






【 東京大学と防災科学技術研究所の研究グループは、日本列島の地下深く潜り込み大きな地震をもたらす原因となる「フィリピン海プレート」が、近畿から中国地方にかけて大きく断裂している可能性があるとする分析結果をまとめた。
日本列島の形成過程の解明に加え、西日本の地震リスク評価の見直しなどにもつながる。解明したのは、東大理学系研究科の井出哲准教授と防災科研の汐見勝彦室長らの研究グループ。
西日本で観測された地震の震源の深さの分布などをもとに、地下のプレートの形状を推定した。その結果、紀伊半島の西端から淡路島中部を通って鳥取市近辺へと至る地域の地下で、プレートが裂けている可能性が高いことが分かった。
裂け目は地表から、地下約70キロメートル程度までの深さに達しているとみられるという。
同プレートは約200万~400万年前に、日本列島の地下に沈み込む方角を北北西から西北西へとわずかに変えたことが知られている。このときに、プレートの中でも海山の並んだ一部分に力が加わり、断裂をもたらしたと、研究グループではみている。
断裂の結果、中国・四国地方の下にはプレートがあって下から支えられているのに対して、近畿地方の下はプレートが深く沈み込み、支えのない状態になっている。
近畿地方で活断層が多く、中国・四国地方で少ない理由と考えられる。また断裂部を通って地下深部から水などがわき上がっており、これが和歌山県から兵庫県北部にかけて、白浜・有馬・城崎などの温泉ができた理由だとみられるという。
わき水は内陸型地震の発生にも影響を与える。研究チームによると1995年の阪神大震災も、プレートの断裂部を通って地下から上がってきた水によって影響を受けた可能性があるという。
井出准教授は「活断層の存在だけでなく、今後は地下からわき上がる水の供給も踏まえて西日本の地震リスクを考え直す必要がある」と指摘する。
またフィリピン海プレートは東南海・南海などの海溝型巨大地震を引き起こす原因になる。これまでプレートの断裂は、海溝型巨大地震の発生を想定したシミュレーション(模擬実験)の研究などでは想定されていなかった。
海溝型巨大地震が連動して起こる可能性などリスク評価にも、今回の成果が影響を与える可能性もあるという。
  日本経済新聞 2010年7月9日 


製麺機での麺打ちを経験した方なら、このフィリピン海プレートの振る舞いは容易に理解できるだろう。厚みの厚すぎる麺生地(小麦粉の塊)はローラーに入っていく際にスムーズに入らずアスペリティが形成されギシギシと抵抗する、適当な厚みならばスムーズに麺は伸ばされていく、しかし、薄すぎると折れて重なったり断裂してしまう・・・だろう。(麺打ちの場合とは異なり、これに海洋プレートには海山とかの夾雑物が挟まっていて地震予知を難しいモノにしているのだろうが・・・)兎に角、アムールプレートとマントルと云う麺打ち機に、フィリピン海プレートと云う麺生地を差し込んで伸ばそうとしたら厚みが薄すぎたので割けて重なってしまった・・・と云う状況になっているのだろう。麺生地が製麺機のローラーで割けて重なってしまうと、その重なった部分にアスペリティが形成されてしまう。その部分こそが野島断層やら1995年に起きた阪神・淡路大震災の震源等が、そのフィリピン海プレートの裂け目付近に該当するのだそうだ。

尚、若くて薄いフィリピン海プレートは、若いので太平洋プレートと云った年代物の海洋プレートと違い麺打ち機の奥底まで達していない。太平洋プレートでのモデルでは、既にマントル遷移層(地下410Km〜660Km)まで海洋プレートが到達しているのだそうだが、フィリピン海プレートは新しいのでマントル遷移層まで到達していないのだそうだ。(地下70Km位)

同じく日本でプレート境界型地震を引き起こしてきた太平洋プレートとは若干条件が異なると思うので十把一絡げではない地震予兆監視体制整備も必要だと思うが、従来理論に則った現在の南海・東南海・東海地震予知体制では役に立たないと思うのだ。

地震予知とは例えるなら、風船をドンドン膨らませていて割れる時を事前に予測する様なモノだと思う。概ね、この位の時間間隔で割れているので、次に割れるのはいつ頃だと云う単純な予測から、次にどの程度に膨らんだかを計測して単純予測されていた時間間隔で推し量って微分積分的な予測を行おうとしているのだろう。例に挙げた風船を膨らませていって破裂させる事を予測するよりも地震予知は遙かに難しいと思う。

膨らませ続けた風船は必ず破裂するが如く、南海・東南海・東海地震は次回も必ず発生するだろう。そして、東海地震想定域には我が国最大の英知と予算規模で地震予知網が設備されているが、これは次回の東海地震発生の事前予測が可能だと心底思っている研究者はいないだろうと思う。但し、これは原子力村と同じく地震学全体への養分として存在している事業である。学問の発展の為には卒業した学生の受け入れ先として象牙の塔の延長が必要なのだろう。

M8〜M9クラスの南海地震が今後30年以内に60〜70%と云う予測の元で、200年に一度、1000年に一度レベルの地震災害と云う従来の想定外を想定内にすべく最大被害予測がなされる様になり、それを想定内として従来型の経済モデルを継続していこうとしている事に若干の違和感を感じている。

従来型のプレート境界型地震には想定外だった新たな知見が次々得られてきた、それらの新たな知見との目盛合わせが行われていて次の震災以降には選り正確な予測も可能となっていくのカモ知れないが、今日の段階での知見と科学力では多くの人々の生活を支える為に実際に動き続けている経済活動に悪影響を及ぼしても猶、最大被害予測を有期期限付でアナウンスし続けた上で、現在の知見と科学力の不足を痛感している筈の予知連のお歴々の皆さん方に、影響圏内の住民の皆さん方の生命財産を救える充分に早いタイミングで「警戒宣言」を発令する勇気が在るだろうか?もし「人の命は地球より重い(by 福田赳夫首相)」が事実なら、人の命が危ぶまれない場所にしか日本人を住まわせられなくなってしまう。人1人の寿命の範囲ならば、そんな場所が無いとは云えないが生活圏は大きく縮小を余儀なくされるだろう。だが、人命を何よりも尊重するのなら世代を超えて、先祖伝来の土地を捨てて選り安全な場所に住まう努力を継続していくべきだが、そう云う取り組みを行うのではなく・・・何食わぬ顔で日常を過ごさせながら、震災発生の寸前に「警戒宣言」を発令して住民全員が逃げ出せてメデタシ・メデタシなんて夢物語が現実になる日は当分来ない事は少し考えれば誰にだって判りそうな話だ。地震予知は、今日の我々の科学力では適わぬ夢だ。

膨らませ続けた風船が必ず破裂するが如く、南海・東南海・東海地震は次回も必ず発生するだろう。但し、その時がいつかは判らない。10年後かも知れないし30年以内かも知れないし50年以内かも知れない。起きてしまう事を止める事は出来ないが、その時により多くの人々の生命財産を守る為に、国家として社会として取り組むべきだと思うのだ。






0 件のコメント:

コメントを投稿